たまには日頃の仕事の話、ちょっと気になった
5年目10万kmのキャンターの車検整備の話を…
現在の三菱キャンターですが、厳密にはFUSO(ふそう)キャンター。
三菱ふそうは三菱自動車から分離・独立し、メルセデスベンツの
ドイツダイムラーグループの傘下の会社となっています。
エンジンはふそうとダイムラー、そしてイタリアのフィアットが共同開発した
4P10型の電子制御直噴ターボディーゼルエンジン(3000cc)を搭載。
このエンジンはニッサンアトラスにも搭載されていますが、
三菱ふそうのこのエンジンには環境対策としては、再生制御式DPFに加えて、
小型トラッククラス初の尿素SCRシステムBlueTec(ブルーテック)システムが採用されています。
また、ブレーキにはハイパフォーマンスカー(乗用車)への装着で有名なブレンボ社の
全輪ディスクブレーキを採用しています。
(偶然、同じブレンボブレーキのR33スカイラインGT-Rと、フォレスター2.5STi が入庫中です。)
と、ハイスペックな雰囲気が漂っていますが・・・
実はハイテク&高性能とは裏腹に、いろいろと問題もあります。
毎度のことなのですが、点検作業の一環としてコンピューター診断を行うと・・・
なんと! 10数項目の故障コードが出てきます。
この診断結果には過去形のものと現在進行形のものがありますが、
まず重要なのは現在進行形の故障と考えます。
この年代のキャンターはエンジン制御&触媒関係の不具合が非常に多いですが、
ひとつ、或いは複数の不調が他の部位にも連鎖反応し、異常として現れる感じです。
上記の項目の中で現在も異常として継続中の項目はNoxセンサーの温度異常。
(下の写真の赤い部分:部品で8万円位するものです)
これによって尿素SCRシステム Blue Tec の制御が停止している。
また、制御バランスやそもそものあまり上手く無いエンジン制御によって
触媒にススが溜まりやすいのではないか。そんな印象も受けます。
もう少し年式の新しいグリルに青い線が入ったタイプだと、改良されて大分故障が
少なくなっているそうです。
あと、数年のうちに国産エンジンにチェンジされるとの噂もあり。
最近(現在の現役世代)のトラックのディーゼルエンジンはこのような故障が多いですが、
これは他のメーカーでも同様です。
短距離走行を繰り返す車両では特に条件が厳しいので、大手流通業者の配送トラックなどは
ウインズやワコーズの添加剤を欠かさず注入&メンテナンスしているそうです。
メーカーではBOSCHやDENSO等の大手部品メーカーの提供する高圧燃料噴射システムを基に
様々な使用条件を想定して自社のエンジン制御システムを作り上げますが、
世の中いろいろと想定外があって当たり前で、対応しきれていないのかもしれません。
頑張って技術を使いこなして欲しいものです。(部外者で工数も考えないので言える発言か…)
あと、高性能のブレンボブレーキですが・・・
実は、外車の乗用車と同じでブレーキダストでとてもホイールや足回りが汚れます。
また、ブレーキパッドばかりでなく、ディスクローターも交換前提の消耗品となっているので、
正直、ランニングコストは高いです。高性能は高いということですね。
(フロントパッド・ディスクローターそれぞれ25000円位なので、前側の部品代で8万円弱です)
(ブレーキパッドは新品で14mm、使いきったものは残り4mmで断熱層部分となります。)
(ディスクローターは偏摩耗&外周部のバリが酷いです。)
今回、この車両はエアコンの故障修理(コンデンサー:室外機のモーター交換&ガス補充)や、
燃料フィルター、エアフィルターの交換なども行いました。
ちょっと古いマツダのタイタン(もちろん規制対応後のモデル)で
60万㎞を超えても元気?!に使われているお客様もいらっしゃります。
最近のクルマはハイテクな分とてもデリケートでなにかと大変ですが、
整備する立場としても最新技術や故障情報などに気を配り、より安全に、
より長い間、より快調に、なるべく低コストに・・・ を心がけて
日々整備に取り組んでゆきたいと思います。